第7回 『グラシアス』 愛知県岡崎市の結婚相談所

2019年04月13日




カメラを向けると恥ずかしがって笑い出す塚平さん。撮影に苦労しました



19歳で初婚。身をもって知った結婚生活の天国と地獄


 結婚の「天国と地獄」を身をもって知っている女性がいる。愛知県三河地域で結婚相談所「グラシアス」を運営する塚平寿奈さんだ。まずは地獄の経験から。

 19歳で結婚した塚平さんは3人の子どもに恵まれた一方で、夫からの日常的なDVを受けていた。義理の両親は助けるどころか夫に加担。塚平さんは「1円単位での度が過ぎた節約」「午後2時までに洗濯物をとりこまないと説教」などの奴隷的な家庭生活を強いられた。暴力を受けて腕などにあざができることあり、夫の実家では体調が悪くても家事と正座をさせられる日々だった。

「同世代で結婚している友だちがいなかったし、母も嫁姑問題で苦労をしていたので、『結婚とはこういうものなんだ』とあきらめていたんです」

 なんとしても3人の子どもは育て上げなければいけない――。10年以上に及んだ地獄の生活でも心に誓っていた塚平さん。変化が訪れたのはパートとして外で働き始めたことがきっかけだった。

「他の主婦は平気でランチを楽しんだりしているんです。あれ? 私の結婚って普通じゃないの?と初めて思いました」

 塚平さんは弁護士事務所に駆け込んで、親権を確保しながら離婚することに成功。その辛かった時期を支えてくれたのが仕事先の障がい者支援施設で知り合った現在の夫だった。

「子どもたちのことをいつも気にかけてくれて、ときどき食事に連れて行ってくれました。大人の男女が恋愛するのは簡単ですが、他人の子どもを大事にしてくれるなんて……。すごい人だなと思いました」


心温かい夫との子連れ再婚。「100年分ぐらい幸せです」


 彼の温かい心は子どもたちに届いた。塚平さんは「1人でも反対する子どもがいたら再婚しない」と決めていたが、当時中学校3年生だった長女をはじめ、長男と次男の3人ともが「あの人と結婚して。結婚式もやってほしい」と懇願。式には80人以上が駆けつけ、ともにバツイチの2人を祝福してくれた。

 それからの日々は充実しすぎて時間の経過を忘れるほどだ。塚平さんは夫が運営する障がい者支援施設で働き続けており、子どもたちは忙しい両親のために家事を分担して手伝ってくれている。

「あの子たちは主人のことがずっと大好きで、私が先に帰宅すると『パパは?』と繰り返し聞いてきます。まだ結婚して1年半ですが、100年分ぐらい幸せです。主人の母親も3人の子持ちの私にすごく優しくて、いつも温かい言葉をかけてくれます」

 グラシアスを始めるにあたり、塚平さんにはいくつかの方針がある。1つは、「結婚生活は相手によって天と地ほど違う」という自らの体験をもとに、会員の結婚相手選びには慎重を期することだ。

「お付き合いを迷っている人には、言いにくそうにしていてもしっかりと話を聞くようにしています。会って間もない相手から気持ち悪い性癖を聞かされた人には、『その男性は身近な人を支配下に置きたがるタイプだと思う。やめたほうがいいよ』とアドバイスして、納得してもらったうえで私がお断りをしました」






海が見える蒲郡駅前の風景。グラシアスは岡崎市や蒲郡市などを中心に地域密着で活動している




精神疾患や障がいがあっても結婚するためのコツ


 グラシアスのもう1つの方針は、持病や障がいを持った人も会員として受け入れることだ。支援施設での仕事で何百人という障がい者と接して来た塚平さん。親戚にも重度の知的障がい者がいて、子どもの頃から親しく付き合ってきた。

「私が会ったこともない支援員さんの話をニコニコと笑顔で話してくれるんです。きっと素晴らしい人なのでしょう。私もそういう人になりたいな、と思いました。ボランティア精神は強いほうなのかもしれません」

 だからこそ、病気への偏見などには強い姿勢で反対する。うつ病を長く患っていた男性会員がいた。優しく純粋な人で、塚平さんが女性とのコミュニケーションなどを指導し、ある女性とのお見合いが成功。2人は結婚直前だったが、女性の父親が「うつは人殺しをする」などと言い出して破談になってしまった。塚平さんは我慢しきれずにその家に乗り込み、いかに偏見であるかを説明し、彼を婿に迎えなかったことを必ず後悔すると伝えた。

「その彼はいま、恋人ができてうちを退会しました。本当に良かったと思います」

 もちろん、苦労は絶えない。統合失調症を患っている会員とは1日に2時間も電話で話した時期があった。入会してからお見合いをして、交際に進むまでは、常に不安がつきまとい、「やめたいです」が口癖になっていたのだ。

「そうですか、と退会してもらうのは簡単です。でも、人はできれば一度は結婚したいもの。それをお手伝いするために私はいるのかな、と思い直すと頑張れます。自分の課題は何なのかを理解すれば、その後はすんなり進むこともありますから」

 塚平さんによれば、精神疾患や障がいを持つ人の婚活にはコツがある。まずはちゃんと自己理解をして、結婚相手に配慮してほしいことを伝えられるようにする。相手にとってのメリットもきちんと提示することも重要だ。地元志向の高い愛知県においては、婿養子などの需要は高い。

 結婚とは家族になることなので、相手の両親などの存在を避けて通れない。間違った相手を選んでしまったら「地獄」が待っていることもありうる。でも、良き相手ならば100年分の幸せを得られるのだ。塚平さんはそれを痛切に知っているからこそ、今日も一人ひとりの会員に親身になって寄り添い続けている。(取材日:2018年11月22日)




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